月夜の翡翠と貴方【番外集】
*舞う銀は美しく
『その髪の色って、生まれつきですか?』
チェーリスの街を出発する、前日。
稽古が終わり、爽やかに汗を拭うクランへ、ジェイドはそう問いかけた。
ルトは今、向こうでラサバと話している。
『そうよ。母譲りなの』
結った銀髪がほどかれ、さらさらと揺れた。
髪を見つめる私へ、クランが微笑む。
『…珍しい、色ですね』
私の言葉に、クランは『貴女ほどじゃないわよ』と笑った。
『ジェイドさんこそその髪の色、私今まで見たことないわよ。生まれつきでしょう?』
『…はい』
言われて、自分の髪を見てみる。
…碧の髪。
好きにはなりたい、けれど難しい、髪の色。
『…クランさんは、自分の髪の色、好きですか?』
訊くと、クランは驚いたような顔をした。
慌てて、『深い意味はないです』と付け加える。
クランは優しく笑うと、『そうねえ』と言った。
『…孤児院にいたころは、よくいじめられたものよ。髪の色が変だって』
輝く銀髪に触れながら、彼女は話してくれた。