月夜の翡翠と貴方【番外集】
『その頃は、自分の髪が嫌で仕方なかった。けど、団員を集めに孤児院を訪れた父が、私を人目見て言ったのよ。この子を引き取るって』
思い出を懐かしむように、目を細める。
ジェイドは、黙って聞いていた。
『なぜと訊いたら、その髪の色だって。綺麗だと言われたけど、なんだか納得いかなかった。そりゃあ、この髪が自慢だったら、誇らしく思うだろうけどね』
…嫌いな髪を褒められても、嬉しくない。
私も、そうだ。
『それで、訊かれたのよ。その髪は生まれつきか?って。母譲りだと答えたら、そりゃあいいって言って笑われたわ』
くすくすと、クランは笑う。
そして、身の上を話してくれた。
クランが生まれたときから父はおらず、母が一生懸命育ててくれたこと。
けれどその母も他界して、六歳のとき孤児院に行ったこと。
『団長はね、言ったのよ。母譲りなら、誇らしく思いなさいって。その色は、お前の母の形見だろうって』
…形見。
私の髪は、両親からもらったものではないけれど。
目の色は、母からだ。
橙の、この瞳。
…母の形見、か。