月夜の翡翠と貴方【番外集】
十年経っても、彼女の演技は魅力に溢れていて、その髪の美しさも健在だ。
ジェイドは無意識に、フードに隠した髪に触れた。
そして、微笑む。
「…私だけの、武器」
ぽつりと呟くと、ルトが不思議そうにこちらを見た。
「武器?」
ジェイドは、ふ、と笑って「内緒」と言う。
眉を寄せたルトに笑って、私は舞台で銀髪を揺らすクランを見つめた。
…『私だけの、武器』。
あのころよりも、私はこの髪を好きになれた。
この髪を、『生きる術』としてではなく、『魅力』として。
他の人の目に、どう映るかはわからないけれど。
あの銀髪の彼女のように、美しく見えていたら、いいなと思う。