月夜の翡翠と貴方【番外集】
…その、全てが。
頑なに、私を拒んでいる気がした。
*
「あら、やだ!ジェイドちゃんじゃな〜い!」
そう、ミラゼが私を見て高く声を上げたのは、その日の夜のこと。
私とルトは、酒場にいた。
「ジェイドさん、久しぶり!」
酒場に入った瞬間、見覚えのある騒がしさと明るさが、ちかちかと目に映った。
そしてルトの隣にいる私へ、酒場の皆が一斉に声をかけてくれる。
「お…お久しぶりです」
何人か知らない人もいるようだが、前に話したことのある人がほとんどだ。
…もう二度と会うことはないだろうと思いながら、『また』と言って手を振ったあの時。
けれどまた、こうやって会って話ができるなんて。
それからしばらく酒場は、ジェイドとルトを囲んで賑やかな話で盛り上がった。
ルトは、カウンターに座っていたリロザと話をはじめたけれど、私は周りとの会話に精一杯で。
明るい陽気な顔をした女が、ジェイドの髪に触れながら、感嘆の声を漏らした。