月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…すごいね、やっぱり。綺麗…この色、もとからよね?」
少しばかり緊張しながら、「はい」と答える。
「とってもサラサラだわ。どんな手入れしてるの?」
…手入れ、か。
「特には」と言うと、「ええーっ」と女は大袈裟なほど驚いた。
「それで、この髪なの!?やだあ、神様って不公平だわ!」
女の元気の良さに圧倒されながら、苦笑いを浮かべる。
すると、酒を持った男が笑いながら、「おいおい」といってこちらへ来た。
「あんまり、ぐいぐい訊くなよ。ジェイドさんが困るだろう?」
女は眉を下げると、「ごめんなさいね」と謝ってきた。
…謝ることは、ないのだけれど。
私は「いえ」と笑って答えた。
「また、お話できて嬉しいので」
そう言うと、彼女は嬉しそうに「ふふ」と笑ってくれた。
その後は彼女に名前を訊いたり、他の人々と他愛のない話をしながら、楽しい時間を過ごした。
やがて酔いつぶれてうつ伏せたり、「そろそろ」と言って帰っていく人が増えてきた頃。
酒場は賑やかな雰囲気の余韻を残しながら、静けさに満ちていた。