月夜の翡翠と貴方【番外集】
数人の男女が、向こうの席で楽しそうに話をする声が聞こえる。
ルトは前回のことをきちんと覚えているらしく、酔った様子を見せずにカウンターでミラゼと話をしていた。
ジェイドは酒こそ飲んでいないが、人々との会話に疲れ果てている。
…もとから、こんなに喋ることがない。
いつもルトが話して、私は相槌を打つくらいだから。
けれど、やはり嬉しい気持ちはある。
また会えた、話が出来た。
一緒に、笑い合うことができた。
身体は疲れたが、心地良い気分であることも確かである。
ぼうっと水の注がれたグラスを持って座っていると、隣でカタン、と音がした。
「ジェイドさん」
…優しい、青年の声。
見ると、穏やかに微笑んだリロザが、グラスを持って立っている。
彼は、驚く私の隣へ静かに腰かけた。
「久しぶり…といっても、まあ、そんなには経っていないか」
特に、酔った様子も見られない。
前も彼は酔っていなかったから、酒に強いのだろうか。
私は「ですね」と笑って言葉を返した。