月夜の翡翠と貴方【番外集】
隣にいて欲しい、とルトは言った。
けれど、それだけでは駄目なのだ。
私にとって、ルトの隣にいることは、これ以上ない幸せだ。
それだけで、もう充分だとも思う。
彼の隣で沢山幸せをもらって、…なにも返せない。
…なんて、役立たずな奴隷だろうか。
主人のために、なにもできない。
優しい優しい私のご主人様は、何も言ってこない。
…なにも、してこない。
そんなことを、延々と考えていると。
ルトの後ろで、じろじろと彼を見つめている男の姿が見えた。
私はルトの正面の席に座っているから、向こうの席の男の目が、明らかにルトに向いているのがわかる。