月夜の翡翠と貴方【番外集】
リロザはそれに気づいているのかいないのか、やはり微笑んで「そんなことはない」と言う。
「貴女が優しい女性であるから、私もそうでありたいと思うのだ」
…なんて、良い出会いをしたのだろう。
ジェイドは笑って、もう一度「ありがとうございます」と言った。
それから少しの間リロザと話をしていると、ミラゼが「そろそろお開きにしましょうか」と言った。
どうやら、もう夜も遅い時間になっていたようだ。
「あ、ジェイドさん」
席を立ったとき、リロザが「それと」と言いながら、柔らかく笑んだ。
「…何かあったら、いつでもエルフォード邸に来てくれ。ルクギには言っておく。歓迎するよ」
…何か、あったら。
私が驚きながら、「ありがとうございます…」と返事をすると、リロザは満足気に笑った。
平民でも貴族邸にお邪魔するなんて、容易くできることではないと思うが…
けれど、これはきっと彼なりの優しさ。
私にとって、ルトと一緒にいることがどれだけ大変なことか、彼はきっと理解している。
ルトのことで困ったら…そう、受け取っていいのだろうか。