月夜の翡翠と貴方【番外集】


『届け屋』というのは、私達依頼屋と依頼主をつなぐ役割をしている者たちのこと。

各地の依頼所に直接雇われていて、日々世界中を飛び回っていると言われている。

膨大でかつ機密情報を握って歩いているものだから、彼らの姿を公で見ることなんて、ほぼないに等しい。

私達に情報を渡すときでさえ、さっと用を済ませれば消えてしまうような、そんな者たちだ。

依頼主から依頼所へ、依頼所から届け屋へ、届け屋から依頼屋へ。

このルートを通って、『裏』の世界の仕事は成り立っているのだ。


一通り場所の説明をし終えると、ルトは「ありがと」と言って、ジェイドへ向き直った。

ジェイドは先程まで、いかにもよくわからない、という顔をして地図を見ていた。

しかしルトの顔が向いた途端、びくっと肩を揺らす。

…どうしたのだろうか。

ルトはそれに気づいていないのか、明るい顔をして彼女の名前を呼んだ。


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