月夜の翡翠と貴方【番外集】
「この方角だと、ディアフィーネに寄り道出来るよ。寄ってこうか」
その言葉に、ジェイドは一瞬顔を明るくしたあと、すぐに曇った顔をした。
「……そう」
…あら?
なんだか明らかに、ジェイドの様子がいつもと違うようだけれど。
ルトは彼女の反応に、むっとした顔をする。
「…さっきからさぁ、なにその反応。まだ昨日のこと、怒ってんの?」
どうやらこの酒場に来る前から、ジェイドはこのような態度だったらしい。
彼女はルトの顔を見ようとせず、その唇は可愛らしく結ばれている。
今まで見たことがなかったけれど、これがジェイドの『不機嫌』の顔のようだ。
「……………」
「……何か言えよ」
ルトも眉を寄せ、じっとジェイドを見つめる。
…昨日の夜、何かあったのだろうか。
ミラゼは「まぁまぁ」と笑うと、ジェイドに声をかけた。