月夜の翡翠と貴方【番外集】
「ジェイドちゃんがそんなになるなんて、珍しいじゃない。何かあったの?」
彼女は何か言いたげな顔をして口を開き、けれどまた閉じる。
ルトはその様子を見て、拗ねたように「今朝、ごめんって言ったじゃん」と言った。
「……そんな、怒ることか?」
…その言葉が、引き金のように。
ジェイドは眉を上げると、「怒ることだよ!」と彼女にしては大きな声を出した。
ルトがぎょっとしたように、目を見開く。
…あら。
ジェイドが、怒った。
「…ジェ、ジェイドちゃん、落ち着いて」
ミラゼがなだめると、ジェイドはつりあげた眉を下げて、「だって」と言う。
「…大事な、ことでしょう…?」
戸惑った顔をしたルトを見つめ、震えた声を出した。
…何があったのか、わからないけれど。
この子をここまで怒らせるようなことを、この男がしてしまったのは間違いないらしい。
全く、何をしでかしたのか…