月夜の翡翠と貴方【番外集】
「ちょっと、ルト。あんた、一体何したのよ」
睨むと、ルトは気まずそうな顔をして、ジェイドから目をそらした。
「…それは…いや、だってさぁ…」
…はっきりしなさいよ。
どうしてこうも、私の幼馴染の男どもは情けないのかと、心のなかでため息をつく。
ジェイドはルトの煮え切らない返事を聞いて、ぎゅっと唇を噛んだ。
そしてか細い、震えた声で、言った。
「……もう、奴隷と主人じゃないって、ルトが言ったんじゃない」
彼女の主人が、目を見開く。
ジェイドは俯くと、彼の返事を待たずに「もういい」と言った。
そして、涙の浮かんだ瞳を睨むように鋭くして。
「……リロザさんのとこ、行ってくる」
ルトの脳天に、稲妻ような衝撃を走らせた。
…そんな比喩が、あながち比喩でもなさそうなくらい。
彼女の言葉に、より一層目を見開いて、固まってしまった。
「リロ…ザ…!?」
予想もしていなかった、人物の名前。