月夜の翡翠と貴方【番外集】
思わず、苦笑いしてしまう。
…よりによって、リロザ。
けれど、まあ納得はできる。
もともとふたり、妙に気の合うかんじだったようだし。
ジェイドは言葉を失うルトへ構うことなく、こちらに背を向けて歩き出した。
「えっ、ちょ、ほんとに行くのか!?…おい、ジェイド!」
ルトの必死な声も虚しく、彼女の後ろ姿はやがて消えた。
「……………………」
…可哀想な『ご主人様』がひとり、愛する『奴隷』に捨てられた。
本来は逆のはずである、そんな言葉が似合う状況。
しんと静まり返った酒場で、ルトは呆然と階段の方を見つめている。