月夜の翡翠と貴方【番外集】
「……わかってるよ…」
俺が、悪いことくらい。
ルトはカウンターにうつぶせると、「なんでこうなるんだろ」とぼやいた。
ミラゼは小さく微笑むと、どこからかティーカップを取り出す。
「…あんたが、ガキなのよ。誤魔化すにしたって、言い方があるでしょう」
…何も、言い返すことができない。
彼女の、言う通りだからだ。
ジェイドの気持ちも理解できるのに、つい思っていない言葉が出た。
ミラゼに散々ガキだガキだと言われてきたが、やはりその通りな気がしてくる。
「……馬鹿だなぁ、俺」
そうつぶやいたとき、目の前にコトンと可愛らしいティーカップが置かれた。
注がれているのは、わずかに湯気の立った、明らかに酒ではないもの。
「…なにこれ」
「紅茶よ。見てわかるでしょう」
「酒場に、こんな上品なもんがあるのかよ…」
カップを手にして、口つける。
ひとくち飲んで、やはり合わないなと思った。
「……紅茶、苦手なんだけど」
決してまずいわけではないが、特に美味しいとも思わない。
合わないな、と感じる。