月夜の翡翠と貴方【番外集】
「そ…そう、なんです。ルトと、少し…」
「喧嘩でもしたか」
「………はい」
リロザはもう、大体わかっているようだった。
「そうか」と言うと、そのまま何も言わずに紅茶を飲む。
それ以上言いたくなければ言わなくてもいい、言いたければ言えばいい…そんな意志が読み取れるのは、気のせいだろうか。
私は服の裾を握りしめると、透き通った色をした紅茶を見つめる。
やがて、「…あの」とリロザを見つめて、打ち明けた。
「…ルトに、訊いたんです。仕事を始めた、年齢を……そしたら、知らなくてもいいことだ、って言われてしまって」
つい、と言うと、リロザは「なるほどな」と言って、カップをテーブルにコトンと置いた。
「…私も、あいつのことはよくわからん。あれがつらいだとかこれが嫌だとか、そんな愚痴も滅多に言わんからな」
最も、私の前で言わんだけかもしれんが、とリロザは言う。
…確かにリロザより、同じ仕事仲間でもあるミラゼのほうが、何かと言いやすいのかもしれない。