月夜の翡翠と貴方【番外集】
「あいつは…貴女のことを、とても大事にしているよ」
突然言われた言葉に、少し驚く。
どう反応して良いのかわからず、「は…はい」と答えた。
けれど、リロザの顔は悲しそうで。
「…決して汚さないよう、そっと宝物を大切にするように。ルトは貴女に触れるその手の濁りさえ、どうにかしたいと思っている」
…ルトは、綺麗だよ。
そう、何度も告げたのに。
彼は、自分を汚いと言う。
そこで、そういえば自分も同じことを言っていたのだと気づき、心の中で苦笑した。
…似てるね、私達。
静かに目を伏せるリロザに、私は小さく笑みを浮かべた。
「…どうしたら、いいんでしょうか。待つべき、なのかな」
話してくれるのを、待つ?
彼は、待ってくれた。
私が過去を話すのを躊躇ったとき、『お前が話せるまで待つ』と言ってくれた。
けれど待ったとして、彼は話してくれるのだろうか。
だって、ずるいひとだもの。
その笑顔で全てを誤魔化して、逃げようとする。
最低な、ひとだもの。
「…待つも何も、簡単なことだと思うけどな」
そう言ったリロザに、私は顔を上げた。