月夜の翡翠と貴方【番外集】
リロザは私を真っ直ぐに見つめて、言う。
「…貴女は、ルトの『汚い』ところを、どう思う?」
その問いに、私は目を見開いて彼を見つめ返した。
…ルトの、『汚いところ』。
獣のような、暗くて鋭い深緑。
平気で人を殺めようとする、その精神。
きっと、耳を疑わずにはいられないのだろう、その過去。
どれもきっと、普通ならおぞましいとさえ思うようなものだ。
私だって、未だに慣れない。
彼の冷酷な面を平常心で見つめるのは、恐らくまだ無理だ。
…けれど、でも。
それはどうしようもなく、『ルト』という男の一面で。
そして私も、どうしようもなく彼に溺れていて。
きっと、狂っている。
こう思う私は、きっと狂っている。
私は迷うように目を伏せたあと、リロザをしっかりと見つめた。
そして、口を開く。
問いの、答えは。
「私は…彼の『汚い』ところも、愛したいと思います」
全てを理解できるとは、思わない。
ルトの全てを分かってあげられるなんて、たとえこの先何十年経とうと、無理だと思う。