月夜の翡翠と貴方【番外集】
それでも、いい。
私はもう、囚われてしまったのだ。
ルトの明るさも、優しさも。
…激しさも、恐ろしさも全てに魅せられた私には、どれもが美しく思えた。
確かに、恐ろしいと思う。
怖いとも、思う。
けれどそれは、同時に甘美なものでもあって。
むしろ、死ぬなら彼に殺されたいとさえ思う。
そんな私はもう、きっと後戻りはできないのだろうけれど。
私の答えに、リロザは満足げに微笑んだ。
「…それはきっと、ルトも同じだろう。君のその気持ちを、言ってやるといい。あいつはちゃんと言わないと、わからない馬鹿だからな」
…彼の全てを、包むように愛してあげる。
なんて、私にできるかわからないけれど。
少しでも、彼が弱さを見せてくれたら。
精一杯に、抱きしめてあげるから。
私は一口紅茶を飲んで、ほっと息をついた。
「…なんだか、落ち着きました。ルトに私の気持ち…伝えてみます」
少し気恥ずかしくなって、へらりと笑ってみる。
リロザは「それはよかった」と微笑んで、紅茶に口つけた。