月夜の翡翠と貴方【番外集】
…彼に話して、よかった。
やはり、素敵なひとだと思った。
真摯なひとだ。
誠実なひとだ。
彼だからこそ、ミラゼやルトは信頼して話ができるのだろう。
「…ありがとう、ございます。お話…聞いて下さって」
小さく頭を下げると、リロザは美しい金髪を揺らして、紅茶のカップを置いた。
「役に立てたようで、よかったよ。また、いつでも来てくれ」
遊びに来るだけでもいいんだぞ、と言って、彼は棚に大量に入った本を指差す。
「本は好きか?」
「それなりには…」
最近は、読んでいないが。
ルトがあまり読まない人だからか、触れる機会が無い。
リロザは嬉しそうに「そうか」と言った。
「本の他にも、古い文献や書物がたくさんある。読みに来るだけでも、こちらは構わないからな」
…本、か。
たまには、いいかもしれない。
「はい。ありがとうございます」
「うむ」
笑い合ったそのとき、いつの間に部屋から出ていたのか、扉を開けてムクギが入ってきた。