月夜の翡翠と貴方【番外集】
「リロザ様」
そう言って、リロザの耳にこそりと何かを話す。
リロザはそれを聞くと、何故かにやりと笑った。
「それは、面白いな」
…面白い?
何のことだろうかと思いながら彼らを見つめていると、ムクギがまた物音を立てずに部屋から出て行った。
しかも、何故かリロザはこちらを見て、何かを考えるような表情をしている。
「…? えっと…何か」
「…いや…」
そう言って、彼は立ち上がった。
おもむろに私の前に立つと、何故か優しく微笑む。
「…しかし…悔しいな。あの馬鹿に、ここまで貴女が振り回されるとは」
そして、その腰を柔らかく折って。
色の白い綺麗な顔を、こちらへ近づけた。
驚く私の顎へ、彼が手を伸ばす。
「もしあの馬鹿より早く出会っていたら、迷わず私のものにしていただろうに」
思わず、目を見開く。
はじめて会ったときに、運命だとかなんとか、言われていたことを思い出した。