月夜の翡翠と貴方【番外集】
顎に手が添えられ、わずかに肩がびくりと震える。
それに、彼が美しく笑った。
「…可愛いひとだ」
そんな呟くような声が聞こえたと同時に、リロザの顔がさらに近づいてきた。
…抵抗する暇がない、できない。
思わず目をつむった、そのとき。
「リロザぁ!!」
バン!と。
かなり勢いよく、扉が開けられた。
聞こえた声と、見えた人物に、目を見開く。
「……ル、ト」
思わず、その名前が口から零れた。
どうやら、扉を蹴って開けたらしい。
派手な登場をしてきたその人物…ルトは、私たちを見るなり目を見開いて、固まったのだった。