月夜の翡翠と貴方【番外集】

『どうして、そう言い切れるの？』

『…ジェイドは、そんな簡単になびくような女じゃない』

『へえ、大した自信ねえ。要は、そんなジェイドちゃんが、自分には惚れたってことでしょう？彼女は絶対に、自分以外になびいたりしないって？』

…やっぱりミラゼ、喧嘩売ってるだろ。

俺は小さく舌打ちして、『何が言いたいんだよ』と彼女を睨んだ。

『やーね、怒らないの。そういうとこ、ガキだって言ってるのよ』

…別に、怒ってないし。

あれか、すぐ不機嫌な顔になってしまうのを、直せばいいのか。

いつだって笑顔で、大人な対応をって？

最早それは、俺じゃない気がする。

なんとなく、再び冷めきった紅茶に口つけた。


…ジェイドは、好きなんだろうか。

上品で優しい、紅茶のようなものが、好きなんだろうか。

『…ジェイドちゃんは絶対、他の男のところへは行かないって自信があるのにね。自分の過去を晒して嫌われるかもって、恐れてるの？』

二人だけの静かな空間に、ミラゼの声が響く。