月夜の翡翠と貴方【番外集】
もちろんそんなの無くても、ジェイドは俺から離れられない。
生きていくためには、絶対俺から離れてはならない。
俺も彼女も、わかっていることだけど。
…それ以上に、心まで支配するような何かで、俺は彼女を縛りたかった。
自分だけのものにしたくて、相棒なんていう枷までつけてしまった。
『ちゃんと、考えなさい。ジェイドちゃんとこの先も、一緒にいたいと思うなら。パートナーって立場に置くなら、これまで通りじゃいられないのよ』
ジェイドは今まで、俺がどれだけ隠し事をしようが、何も訊いてこなかった。
それは自分が『奴隷』で、俺が『主人』だったから。
そんな…どこまでも従順だった、彼女が。
…はじめて昨日、俺に抵抗したのだ。
『…ほんと、ガキだなぁ、俺』
ぽつりと、自嘲気味に笑って呟く。
ミラゼは『今更気付いたの?』と呆れたような目でこちらを見てきた。
…もう『奴隷』と『主人』ってだけじゃないんだよ、と言ったのは、俺だ。
けれど、いちばんその事を受け入れられてなかったのは、俺だった。