月夜の翡翠と貴方【番外集】
都合良く振り回して、奴隷じゃないと言いながら、隠し事をする。
彼女が俺に対して、従順すぎるほど従順だというのを、いいことに。
ジェイドのほうが、理解できているのではないか。
俺が与えた立場をしっかりと受け止め、考え、行動している。
今まで俺の事に関して、なにも触れようとしてこなかった彼女が、はじめて訊いてきたのだ。
それは相棒というのが、互いの絶対的な信頼の上で成り立つということを、わかっているから。
…最低すぎだろ、俺。
『馬鹿ねえ、やっと気付くなんて』
『俺、ほんっとにどこまでも最悪な奴だわ…』
『ほんと、今更ね』
やれやれといった様子で、ミラゼは肩をすくめた。
そして、カウンターに伏せる俺に、『で、いいのかしら?』と言う。
『…なにが?』
のそりと、顔を上げる。
ミラゼは『ジェイドちゃんよ』とため息をついた。
『迎えに行かなくてもいいの?あんたの可愛い相棒、リロザに独り占めされてるのよ』
『!』
…そうだった。
ジェイドは今、エルフォード邸にいるのだ。