月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…じゃあ、その手はなんだよ。人の女だぞ」
それは、私も訊きたいのだが。
「…リロザ、さん…?」
ちらりと顔を見ると、彼はこちらを一瞥したあと、ルトを見てフッと笑った。
「…お前がなかなか迎えに来ないから、ジェイドさんを口説こうとしていたところだ」
…え。
く、口説かれていたのか…私は。
「な……」
目を見開く私とルトに、彼は「それで?」と言った。
「ルト。お前、偉そうに邸へ乗りこんできたのはいいが…まさか、何も考えずに来たんじゃないだろうな?」
そして、ちらりと私へ視線を寄越す。
ルトは、ぐっと息をつまらせた。
どうやら、私を迎えに来るだけの心持ちは整っているのか、と訊きたいようだ。
「………ルト…」
「……………」
く、と喉がなる。
彼は眉を寄せ、迷うように下を向いていた。
…考えなければならないのは、ルトだけではない。
それは私も、同じだ。