月夜の翡翠と貴方【番外集】


…彼に、伝えないと。

考えて、思って、決めたこと。


私はどんな貴方でも、…たとえその過去がどんなものでも。

私はー…


「ルっ…」

「ジェイド!」


伝えようとしたとき、それはルトの声に遮られて、言えなかった。

びくりと肩を揺らす私を見て、彼は悩ましげな顔をする。

ルト…?

リロザは黙って、ルトを見ていた。

私は戸惑いながらも、「なに…?」と返す。

深緑にいろんな色を混じらせて、彼が「お前は」と言った。


…その、声が、少しだけ震えているような、気がして。


彼のまっすぐな目がこちらへ向けられたとき、今度は身体に、怯えではない震えが走った。

色づいた、深緑。

決意を秘めた、確かな強さで。


まるで射抜くように、彼は私を見つめていた。

酔ってしまいそうな、引き込まれてしまいそうな、そんな視線で。


「…お前は…俺のことを、信じてくれるか」


…小さな弱さの欠片を、見せてくれた。



< 229 / 455 >

この作品をシェア

pagetop