月夜の翡翠と貴方【番外集】

彼を知る者、役立たず、怒りと侮蔑





「いやぁ、まさかルトの女だとは思わなかったよ」


ルトに軽く頭を殴られ、彼の隣の席についたレンウは、それでもなおニコニコと笑っていた。


「………はあ」

「ごめんね?突然あんなことして。僕、美人には挨拶を欠かさないって決めてるんだ」


ふふ、と笑んだレンウに、ルトが横から睨む。

「…手ぇ出すなよ」

……この発言からして、レンウは女好き、ということなのだろうか。


レンウはルトを見て、何故か不思議そうな顔をした。

「君がそんなふうになるなんて、珍しいね。よほど気に入ってる女なのかい?」

確かに美人だけれど、とレンウが言う。

さらに、「今は他に何人いるの?」とも、言った。


………他に、何人?


「い、いないから!!」

焦った顔で、ルトがレンウでなくこちらを見て叫ぶ。

「……………」

白い目で見ると、ルトは「昔の話だから」とおどおどと弁解する。

…昔の、話。



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