月夜の翡翠と貴方【番外集】
「………………」
目眩のような感覚のなかで、その言葉の意味を理解すると同時に、目を見開く。
…はじめて、だ。
貴方から私に、弱さを見せてくれたのは。
震えを隠さずに、告げてくれたのは。
私は震えそうになる唇を堪えて、彼を見つめ返した。
「…当然、でしょ」
貴方を信じないで、他の誰を信じるというの。
瞳の奥に、熱がこもる。
視界が、滲んでいる気がする。
それでも、私は柔らかく笑った。
信じて、私を。
私も信じるから。
どんな貴方も、私は信じているから。
ルトは照れ臭そうな笑顔を浮かべ、やはり少しだけ震えた声で、言った。
「……そっかあ。ありがと」
…言ったじゃない。
今の貴方を、信じると。
私は私の目に映る、今の貴方を信じると…そう、言ったじゃない。
「全く…世話の焼ける」
私達の様子を見ていたリロザが、大袈裟のほどにため息をついた。
同時に、私の肩に置かれていた手も離される。
…あのときムクギが耳元で言っていたのは、きっとルトのことだろう。
ルトが、この部屋に来るとわかっていたのだ。
だから、私を口説こうなんて冗談を言って、ルトを煽ったのか。