月夜の翡翠と貴方【番外集】


もう、無理かもしれない。

まるで真逆な身分のふたりが、子供のころのような関係を築くのは、きっと不可能だろう。

だからこそ、彼らは酒場で会っている。

誰にも見つからないように、夜の街へ足を運んで。

大切なつながりだから。

無くしたくない、関係だから。


リロザがフッと笑ったのを目に映したとき、再びルトが歩き出した。

手を引かれ、部屋を出る。

直前に、扉の横に立っていたムクギへ礼をした。

彼はやはり表情を変えずに、「また」と言った。





「リロザと何話してたの」


エルフォード邸を出た後、ルトが拗ねた顔でそう言ってきた。

手を繋ぎ通りを歩きながら、私は彼の顔をちらりと見る。

「…別に」

「なにそれ。あんな顔近づけといて、別にはないだろ」

どうやら、だいぶ根に持たれているらしい。

何というべきかと考えた後、結局私は「何もないよ」と言った。

顔を見ると、案の定不満気な色である。

私はむっとして、「じゃあ」と言った。

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