月夜の翡翠と貴方【番外集】
「君、今墓穴掘ったよ」
レンウの言葉に、ルトが「あ、いや」と焦り出す。
しかし、レンウは先ほどよりも訝しげに眉を寄せていた。
「…え、いないの?彼女ひとり?」
「そーだよ」
逆に、私しかいないことに驚いているようだ。
「…………ルト……」
「あ、そこは怒るんじゃないんだ?あえて哀れむんだ?」
眉を下げて悲しい顔をしてみる。
…嫉妬できる、身分ではない。
「…君が、ひとりの女性をねえ。意外だなあ」
「お前、それ以上なにも言うな」
「ホント、僕には冷たいんだから。組んだ時だって、異様に風当たり強くって」
…やはり、この男は。
「………ルトと、同業の方?」
そちらの様子を伺いながら、訊くと「そうだよ」と意外にもあっさりとした答えが返ってきた。
…レンウ・ゼリカと名乗った、ルトよりももっと飄々とした男。
この男は、過去にルトと組んで仕事をしたことのある、依頼屋…