月夜の翡翠と貴方【番外集】
帰る家を失っているのは、私も同じだ。
何度も何度も、考える。
『どこで間違えた?』
『どうして、こんなことに?』
後悔は消えなくて、失ったものは戻らなくて。
「…私、は」
今度はこちらから手を伸ばして、ルトの手を握った。
片手で瞳に溜まった涙を拭い、彼を見つめる。
伝えないと。
私の思いを、気持ちを、彼に。
苦しい思いを必死に隠して笑おうとする彼に、伝えないと。
「…ルトの、こと。怖くないって言ったら、嘘になる。けど、でも…」
ルトは眉をひそめて、私を見ていた。
彼はしっかりと、真剣に、私の言葉を聞いてくれる。
…抱きしめて、あげるから。
「…そんなの、もうぜんぶ、構わないくらい…ルトが、好きだから」
なんて言ったら、伝わる?
この気持ちは、どうやったら、貴方に伝わる?
「ルトの全部を、私はきっと理解することができないと思う。でも、頑張るから。ルトが寂しくなっても、それを埋められるように、頑張るから」
私にはもう、なんにもないけれど。
それでも、寂しくないのは、何故だと思う?