月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…それじゃ、だめ、かな…」
何も言わない彼に、不安になる。
やはり、伝わらないだろうか。
ルトの綺麗なところも、汚いところも。
恐ろしいところも全部、愛したい、抱きしめたい。
「…ルト…?」
そっと手を伸ばした瞬間、こちらへ手が伸びてきた。
目を見開くと同時に、力強く抱きしめられて。
「…え、ル、ト」
「あー、もう。ほんとに…」
ルトが、顔を私の肩にうずめる。
その声は、先程より震えていた。
「…馬鹿だよ、ジェイド。優しすぎだよ…」
その言葉に、私は小さく笑った。
…優しいのは、私じゃなくて。
「…それは、ルトでしょう」
綺麗だと言って、そっと扱う。
自分の弱さを見せずに、隠して。
「…もっと、見せて。ルトの不安なことも、見せて」
まだ、私の知らない彼の瞳がたくさんある。
それを、私は目をそらさずに見つめるから。
どうか貴方も、逃げないで。