月夜の翡翠と貴方【番外集】
しかし私の思いとは逆に、彼女は「私だってあなたには長生きして欲しいわよ」と言った。
「あの方が悲しむ姿なんて、見たくないもの」
ユティマが、柔らかく笑う。
その言葉に思わず目を見開いた時、ムクギが戻ってきた。
「お待たせしました」
ユティマは紙を受け取ると、何故か内容を見て小さく笑った。
「…なんだ?」
「この織物、あなたのですって。これは、大事に織らないとね」
ちらりとムクギに視線を向ける。
彼にはその意図がわからないようだった。
私はむっとして、「そうだ、せいぜい丁寧に織ってくれたまえ」と腰に手を当て言った。
…次に、ここを訪れた時は。
私を放置してふたりが話すのを、もう少し長く我慢してやっても、いいかもしれない。