月夜の翡翠と貴方【番外集】
幸せになって欲しいと、思う。
俺にとってミラゼは、仕事仲間であり恩人だ。
裏の世界に身を置く者に、普通の幸せは望めない。
けれど、ひとつくらいは大切なものがあっても良いと思う。
俺にとってそれは、ジェイドなわけだけれど。
「…そもそも、イビヤさんとはいつからなの?」
そろそろ愚痴も聞き飽きたので、訊いてみた。
すると、ミラゼは尖らせていた唇を引き結んで、ほんのりと頬を赤く染める。
…こういうときだけ、彼女は女らしいところが見られる。
そうじゃなくても、ミラゼは充分いい女だけどさ。
幼馴染の目から見ても、そう思うくらいには。
「そうねえ…出会ったのは、三年前よ。一緒に仕事を始めたのは二年前から」
「え、早くね?」
確かに二年前は、俺もミラゼも仕事の都合で全く会えなかった。