月夜の翡翠と貴方【番外集】
そこで、向こうからどっと笑い声が聞こえた。
何やら盛り上がっているらしいジェイド達の方を横目に見ながら、酒を飲む。
ミラゼもそちらを見つめながら、「でもね」と呟いた。
「…本当に、不安だったりするのよ。あの人、私に不満とか、ないのかしら」
…少しだけ、しゅんとした様子で。
眉を下げてそんなことを言うものだから、恋は女を変えるんだなあ、なんてぼんやりと思ったのだった。
*
イビヤ・アイリスがミューザへ戻ってきたのは、ルトと酒場へ行った二日後だった。
どうやら、諸用で遠出をしていたらしい。
その日の夜、酒場の人々にそれはそれは明るく歓迎された彼は、やはりにこやかな笑顔を浮かべていた。
「あんた、ミラゼの相棒なんだって?さぞかし大変だろう」
「そうそう。特にあんたみたいな人のよさそうな奴は、気をつけた方がいいよ」
「…ちょっと。どういう意味よ」
そんな会話から始まった夜は、イビヤを囲んで大いに盛り上がっている。
私とルトはその近くで、笑って話を聞いていた。