月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…格好いいなぁ、イビヤさん」
ルトが隣でぽつりと呟いた言葉に、「うん」と頷く。
「ルトも、少しは見習ったら」
「…なに?やっぱりお前はああいう優しい男が好きなの?」
「大抵の女のひとは、優しいひとが好きだよ」
「…………」
ふ、と笑ってルトを見つめる。
彼はむっとした顔で、「俺も充分優しいつもりだけど」と言った。
私は笑ってルトを見つめ続ける。
「ルトも優しいよ。あとはもっと紳士になれば完璧」
「…あっそ」
少し酒を飲んだからか、ふふふと笑ってしまう。
そんな私に、ルトは顔を赤くしながら「笑うな」と唇を尖らせた。
*
「またお会いできて嬉しいです、ジェイドさん」
イビヤを囲んでの話が終わり、今度は酔いがまわってきたルトが、仲間たちと盛り上がり始めた頃。
酔いを覚ますために酒場、もとい店の外へ出ると、店の前にイビヤが座っていた。
「…こちらこそです。イビヤさん」
夜空に欠けた月が浮かんでいる。
イビヤに小さく笑いかけると、優しげな笑みを返してくれた。