月夜の翡翠と貴方【番外集】


「…格好いいなぁ、イビヤさん」

ルトが隣でぽつりと呟いた言葉に、「うん」と頷く。

「ルトも、少しは見習ったら」

「…なに?やっぱりお前はああいう優しい男が好きなの?」

「大抵の女のひとは、優しいひとが好きだよ」

「…………」

ふ、と笑ってルトを見つめる。

彼はむっとした顔で、「俺も充分優しいつもりだけど」と言った。

私は笑ってルトを見つめ続ける。

「ルトも優しいよ。あとはもっと紳士になれば完璧」

「…あっそ」

少し酒を飲んだからか、ふふふと笑ってしまう。

そんな私に、ルトは顔を赤くしながら「笑うな」と唇を尖らせた。





「またお会いできて嬉しいです、ジェイドさん」


イビヤを囲んでの話が終わり、今度は酔いがまわってきたルトが、仲間たちと盛り上がり始めた頃。


酔いを覚ますために酒場、もとい店の外へ出ると、店の前にイビヤが座っていた。


「…こちらこそです。イビヤさん」


夜空に欠けた月が浮かんでいる。

イビヤに小さく笑いかけると、優しげな笑みを返してくれた。


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