月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…これから、どうされるんですか?」
彼の隣に座って、冷たい風に当たる。
イビヤが心配そうな顔をして、訊いてきた。
そういえば、ミラゼには話したが彼には話していなかった。
ルトと一緒に仕事をすることになったと伝えると、イビヤは「そうなんですか」と驚いた。
「一緒に…ということは、貴女もこれからは同業者となるのですね」
…そ、そうか。
私も、依頼をこなせば彼らと同じ『依頼屋』になるのだ。
「…なんだか、信じられないです」
ふう、と息を吐く。
奴隷屋にいた頃の自分には、依頼屋になる未来など想像すら出来なかっただろう。
私は明日から一週間、ミラゼと戦いの稽古をすることになっている。
ナイフや短剣の扱いを習うためだ。
「…そうですね。不安は多いと思いますが、頑張って下さい。私にできることがあれば、言ってくださいね」
「…はい。ありがとうございます」
明日からミラゼに稽古をつけてもらうことを言うと、彼は一瞬驚いた顔をしたあと、優しく微笑んだ。