月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…そうですか。ミラゼは、ナイフの扱いが上手いですからね」
彼の紫の髪がさらさらと揺れる。
イビヤは道具もそれなりに使えるが、普段は体術を基本に戦うらしい。
ナイフを使って遠距離から攻撃をしかけるミラゼと、体術で接近戦もできるイビヤで、丁度良い塩梅(あんばい)というわけだ。
そのことを聞いて思わず感心してしまうと、ミラゼに『ふたりもそうでしょ?』と笑われた。
ルトは専ら体術だ。
剣も扱えるが、いずれにしろ長剣であり、接近戦向きである。
一方の私はナイフ使いであるミラゼに習うこともあり、遠距離からになる。
最も、ただ私は一般のそれよりいくらか身のこなしが軽いというだけで、蹴りや殴りにパワーはない。
どちらにしろ、私に接近戦は向いていないのだ。
会話をなくして、辺りが静まり返る。
私は月が雲に隠れるのを眺めながら、口を開いた。
「…イビヤさんは、『相棒』という関係に、何が大切だと思いますか」
少しの沈黙のあと、彼は穏やかに言った。
「…お互いを、信じ合うことだと思います」
雲が、月明かりを透かして淡く光る。