月夜の翡翠と貴方【番外集】
しかし、やがてイビヤをきっと睨むと、赤い顔をして言った。
「…し、知ってるわよ、そんなの。…機嫌は、今、直ったわ」
…それは、ひとりの恋する女だった。
イビヤが、嬉しそうに笑う。
周りが騒ぎ立てるなかで、ミラゼは少し背伸びをしてイビヤの耳元に唇を近づけた。
そして、紅の塗られた美しい唇を動かし、何かを囁く。
ジェイドはふたりを遠くから見つめながら、その唇の動きが愛の言葉を囁いているのだと悟った。
…恐らくは、『私も愛してるわ』。
近くに目をやると、ルトが憂いた瞳を細めて、ふたりを見つめていた。
…私達の尊敬する、彼と彼女は。
少しだけ不器用に、その愛を育てている。