月夜の翡翠と貴方【番外集】
4 桃色の華
約束、音、純情乙女
例えば、まだ母様が生きていて。
この世界のどこかで、元気に暮らしていらっしゃるとしたら。
きっと私は、会いにはいけないのだと思う。
落ちぶれて、
意地汚くなって、
こんな娘の姿を、母様は見たいとは思わないでしょう。
...だから、私は隠れてしまいたい。
この月夜に、この闇の下で。
あの頃のわたしにはなかった、
今の私の、醜さごと。
空の上の母様に、
...どうか、見られてしまうことのないように。
*
ミューザを出てから、半月後。
私達は依頼所へ向かう途中で、ディアフィーネの村へ立ち寄った。
以前この村を訪れたときから、約六ヶ月が経った。
セルシアは、この村をきっといい方向へ向かわせると言っていたけれど。
...どうなった、だろうか。
半ば不安を抱きながら、私達は村の入り口へと立った。
そして、前にこの村を訪れたときのように、目を見開いたのだ。
「...人が....たくさん」
歩いて、いる。
しっかりとした、足取りで。
目の前の道には、普通の村と同じくらいには人の通りがあった。