月夜の翡翠と貴方【番外集】
路上に座り込んでいる人間が、見当たらない。
村自体は、以前の貧しい様子と変わらないけれど。
人が、違う。
顔つきが、明らかに違う。
明るい、とまでは、いかなくても。
その目が、『生きている』。
そう思わせるくらいには、確かなものが宿っていて。
思わず、私とルトの顔がほころんだ。
「すげえ...人の様子が違うだけで、こんなに雰囲気変わるもんなんだな」
「ほんとにね。どうしよう、私、嬉しい」
なんでどうしようなの、とルトが笑う。
だって、嬉しいじゃないか。
外から来た私達にもその変化が見て取れるくらいに、村が変わってきているのだ。
つまり、これはセルシアが頑張っている証。
彼女の目指す『いい方向』へ、向かっているということ。
喜ばずには、いられない。
私達は村の様子を眺めながら、領主であるオリザーヌの邸へ向かった。
途中、村の人々のほとんどがある一方向へ歩いているのに気づき、村人に声をかけてみた。