月夜の翡翠と貴方【番外集】
「少しずつですけれど、村全体に治療が行き渡り始めました。皆喜んでいます」
私とルトは顔を見合わせると、上層のオリザーヌ邸へと向かった。
まず入って見えたのは、以前と変わらない花々の咲き誇った庭園。
外観の立派な邸。
しかし、私達を迎え入れたセルシアの姿は、以前と大きく異なっていた。
邸の使用人に私達のことを知らせるよう言うと、彼女はバタバタと足音を鳴らしてやってきた。
「わっ、わっ、わっ!お二人とも…!」
危なっかしく階段を駆け下りてくるセルシアを、私達は呆然と見つめる。
いや、彼女だけではない。
邸の、内装も。
六ヶ月前と、大きく違う。
「……セ、セルシア、様…?」
私がそう呼ぶと、セルシアは「はいっ、ジェイドさん!いらして下さりありがとうございます!」と元気良く返事をした。
「……その、お姿は……」
ルトが、邸中を見渡す。