月夜の翡翠と貴方【番外集】
セルシアは、フフッと得意気に笑った。
「私が、お父様に頼み込んだのです」
…本当に随分と、たくましくなったようだ。
堂々としていて、気品があって。
自分のしていることを、自信をもって誇らしいと言うように。
私はそんなセルシアを、目を細めて見つめていた。
それから、邸内でせっせと働いていたノワードに挨拶して、私達はオリザーヌ邸を出た。
以前と少しだけ変化した村の様子を眺めながら、歩く。
すると、ルトが突然顔を覗き込んで来た。
「…えっ、なに」
「…いや。大丈夫かなと思って」
その目はなんだか、心配そうで。
私は彼の顔を少しの間見つめていたけれど、すぐにぱっと逸らした。
「…別に、大丈夫」
それだけ言うと、前を向く。
立ち止まったままのルトを置いて先を歩くと、後ろから「ジェーイド」と声がした。
振り返らずに、ぴたりと立ち止まる。