月夜の翡翠と貴方【番外集】


すると、未だ涙をこぼしながら、セルシアが「しかも、こんなときに強盗だなんて」と震えた声を出した。

「私、そちらのほうが心配でなりませんの。でも、ロディー様ともお会いしなければならないし…ああ、どうしたら」

その言葉に、私はもう一度ルトを見る。

案の定、彼はこちらを見てニヤッと笑っていた。

…言わなくても、同じ気持ちだったようだ。

ルトは、涙目をこするセルシアへ向き直った。


「なぁ、セルシア様」






その日の夜、私達はディアフィーネの森のなかにいた。


「……相変わらず、出口が見えねえ森だな……」


うんざりした顔で、ルトが呟く。

この森は、以前散々迷った覚えがある。

途中でレグート達に見つかり、私とルトは崖っぷちに追い詰められた挙句、その下の川へ飛び込んだのだ。

しかし今回は、向かう方角が違う。

目指しているのは、以前立ち寄った関所の方角ではない。

隣町モンチェーン、だ。


< 281 / 455 >

この作品をシェア

pagetop