月夜の翡翠と貴方【番外集】


「ここはどこなんだよ…」


前回と同様に、ルトは方位磁針を片手に地図を広げて唸り始めた。


…何故、私達がモンチェーンへ向かうことになったかというと。

セルシアは、困っていたのだ。

ロディーにも会いにいかなければならない、しかし強盗も退治しなければならない。

村に退治屋を雇う金はなく、セルシアもロディーと会う勇気がない。

…と、なると、私達に出来ることがおのずと見えてくる。

ルトはセルシアに、『俺らに強盗の件を任せてくれないか』と言い出したのだ。

その代わり、私達がロディーをモンチェーンからこちらへ連れてくるから、会って話をしてくれと。

驚くセルシアに、ルトはにっこりと笑って『これでも腕は立つんだよ』と言った。

…あくまでこれは、依頼ではなく人助け。

報酬を求めない代わりに、セルシアはロディーと話をする。

私達はモンチェーンへ行って、ロディーを連れてくる。

そのついでに、モンチェーンで薪の調達もしなければならない。

灯りのないこの村で、夜に強盗を捕らえるなんて、いくらルトでも難しいのだ。

モンチェーンから帰ったら、手伝ってくれそうな村人に声をかけて、村に篝火(かがりび)を設置する。

これらを提案すると、セルシアは戸惑いながらも了承してくれた。

…というより、判断に迷ったセルシアに『お受け下さい!!』とノワードが必死の形相で言ったのだ。


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