月夜の翡翠と貴方【番外集】
「おや、君の男が戻ってきたようだよ」
そちらを見ると、眉を寄せながらこちらへ歩いてくる、ルトの姿があった。
「…なんか話した?」
睨みながら尋ねたルトに、レンウはやはりにっこりと笑って答える。
「少しね。世間話を」
…まあ、いいだろう。
ルトにわざわざ話すことでもない。
『この男が、変な疑いをかけてくる』なんてルトに言ったところで、どうにもならない。
私も言いたくない、迷惑はかけられない。
最も、告げ口などすれば、レンウが私に向けてくるものは、もっと良くないものになるのだろうが。
「ねえ、君達今夜はどうするの?」
嬉々として訊いてきたレンウに、ルトは不機嫌そうに「この街の宿に泊まる」と答えた。