月夜の翡翠と貴方【番外集】
「え…えっ、と?」
「なんだその間抜けな顔は。ジェイドさんがいつも隣にいる貴様に、俺の気持ちがわかるはずがない!」
ルトと、顔を見合わせる。
なんだか、よくわからないのだが。
眉を寄せる私達を見て、彼の顔は益々不機嫌に染まっていく。
「好きな女が近くにいるのに、触れられないんだぞ!貴様にこの気持ちがわかるのか!?」
そのとき、ルトの顔が一瞬で真剣なものへと変わった。
「わかります」
「なんだと?」
「わかります、その気持ち」
ルトの言葉に、ロディーがちらりと私を見る。
そして、「嘘をつけ!!」と叫んだ。
「わかるわけないだろう!!」
「わかりますよ!!」
何やら、わかるわからないで言い合いを始めてしまった。
ついていけないので、黙っておくことにする。
…そうだ。セルシアは、迫られたら拒んでしまうと言っていた。
それは、ロディーにとって予想以上にショックだったのかもしれない。
「抱きしめたら怯えられる、キスしようとしたら突き飛ばされる!耐えられるか貴様!!」
……とても、悲しくて聞いていられない。
まさか、突き飛ばすまでしていたとは…
ルトが大袈裟なほど共感したように、目尻の出てもいない涙を拭った。