月夜の翡翠と貴方【番外集】


「…………」


…案の定、ルトはなにも言わない。

それはそうだろう。


熱い夜なんて、私達は過ごしたことなどないのだから。



「仕方ないねえ、お邪魔らしいし、僕はそろそろ失礼するよ」


ひらひらと手を振って、レンウが部屋を出て行く。

ルトはやはりベッドに俯せたまま、返事も返さない。

私は扉が閉まるのを、黙って見ていた。


「…………ジェイド」


パタン、と小さな音がしたと同時に、隣から声が聞こえた。


「…疲れた。寝よ」


黙って頷く。

ルトは、レンウのふざけた言葉さえも、なにも言わなかった。


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