月夜の翡翠と貴方【番外集】
…先に私に刺されたふたりは、出血がひどくもう動ける状態ではない。
それをわかっているのか、男は悔しそうに顔を歪めた。
「…くそ…!こんなの聞いてねえぞ…!」
ルトは私をちらりと見ると、ふ、と明るい笑みを見せた。
「…強く咲いたからな、俺の翡翠葛は」
…強く、強く。
彼と一緒に、碧は美しく咲き誇る。
*
強盗達を役人に引き渡し、全ての処理が終わった、朝。
一応、蹴られたところをノワードに診てもらうことになった。
しかし、服を上げて晒した私の右腹を見たセルシアが、悲鳴を上げた。
「きゃあああ!あ、あおっ、青くなってますわよ!ジェイドさん!痛そう!痛そう〜!!」
何故かセルシアが涙目になっている。
…相手も、渾身の力を込めて蹴ってきたのだ。
それなりに痛みはあったし、仕方ないだろう。
「…痛みますか?どうするのが良いのでしょうかな」
ふむ、とノワードが青黒くなった箇所を見て、白い髭を震わせた。
ちらりと、ルトを見てみる。
彼はセルシア以上に、青ざめていた。
「…え…ルト、なんでそんな顔してるの」
「……いや…お前、そんな怪我してんなら、早く言えよ…縛るの手伝わせちゃったじゃん…」
…確かに、痛みを堪えて、強盗達を縛り上げるのは手伝ったけれど。