月夜の翡翠と貴方【番外集】
「…そんな、大した痛みじゃないよ」
「俺が嫌なんだよ。…まぁ、頑張った証拠か」
ぽん、と頭を撫でられる。
それが嬉しくて、思わず口角が上がりそうになった。
…『頑張った』。
そう、言ってもらえた。
褒めてもらえた。
少しでも、ルトの役に立てたということだ。
「今回は、ほとんどジェイドの手柄だからな」
俺は最後に仕留めることしかしなかった、と彼は言うけれど。
それこそ、彼が最後に仕留めてくれると信じることができたから、私は全力で動けたのだ。
「ジェイドさん…素敵だわ…!益々憧れてしまいます…!」
うっとりとした目のセルシアが、こちらを見つめてそう言ってくる。
憧れる…なんて。
そんな言葉を、自分に向けられる日がくるとは。
「とりあえず、薬を塗っておきましょう」
ノワードに薬を塗ってもらい、私は礼を言ってから立ち上がった。